投稿者 smile | 4月 1, 2008

ろくろっ首

ろくろっ首と言いますと、あの首がにゅっと伸びる例のアレですが、その昔は、「親の因果が子に報い」と仏教の因果応報の思想もからんで、実在すると思われていました。確かに、ほの暗い行灯の光りと、障子に映った女性の影。その影の首が伸びるというのは、大変に恐ろしいものです。ですが、それが落語の世界になると……

 えー、いい年して定職もなくブラブラしている男がおります。まぁ、こういう男には、なかなか嫁のきてがないものでございますが、こういう男に限って、なんと言いますか、図太いとでも言うんでしょうか、逆玉の輿を狙っているものでございます。

「おじさん、嫁さんが貰いたいんだけど、誰かいい人紹介してくれよ」
「なんだい、急に。だいたい、お前さん、嫁さん貰ってどうやって養っていくつもりだい」
「そりゃ大丈夫だよ。おかみさんを稼がせて……」
「虫のいいこと言ってらぁ。まぁ、いいよ。ちょうど話があったところだ。おじさんの出入り先でな、お嬢さんがいるんだが、そこの婿養子にならないか。なに、養子と言っても、あれだ。お前さんが一生遊んでも使い尽くせないぐらいの財産があるから、嫁ぎ先で泡食って働かなくちゃいけないわけじゃない。それにお嬢さんも、なかなかの器量好しだ。ただな、そのぉ、夜中の丑三刻になると、寝ているお嬢さんの首が音もなく、すーっと伸びる。それさえなきゃ、本当に申し分ないんだが」
「伸びるのは夜中だけかい。なら、いくら伸びたっていいや。目なんか覚めない」

 いやはや、寝坊がどこで役に立つか分かったものではありません。ところが、実際に首が伸びたところを見てしまうと、もういけません。ほうほうの体で逃げ帰ってきます。オチは、自分の家に帰ると言って聞かない男が、「せっかくまとまったと喜んで、いい便りを首を長くして待っている母親に、どの面下げて帰るんだ」とおじさんに言われて、「首長く? そいつは大変だ。家にも帰れない」

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